夏の甲子園。
今日、横浜高校は準々決勝を迎える。
対戦相手は花巻東高校。
ここまで勝ち上がってきた選手たちは、きっと、今日の1勝だけを見つめていることでしょう。
けれど、その胸には、いつもと違う思いがあるはずです。
昨日、8月17日。
横浜高校を長年率いた、渡辺元智前監督が81歳で亡くなった。
あまりにも突然の知らせ。
あまりにも突然の知らせだった。
そして、その翌日に横浜高校は甲子園の準々決勝を戦う。
この巡り合わせに、言葉を失った人は多いのではないでしょうか。
渡辺元智監督といえば横浜高校。
そして、横浜高校といえば渡辺元智監督。
そんな時代を知っている人にとって、その名前は単なる「名将」という言葉ではかたずけられない。
甲子園で春夏合わせて5度の全国優勝。
通算51勝。
松坂大輔、涌井秀章、筒香嘉智など多くのプロ野球選手を育てた。
野球を通して、人を育てる。
輝かしい実績だけを見れば、まさに高校野球界を代表する指導者です。
けれど、渡辺元智監督が残したものは、優勝回数や記録だけではない。
「野球を通して、人を育てる」
その姿勢こそが、横浜高校に受け継がれているものなのではないでしょうか。
強いチームをつくる。
勝てる選手を育てる。
それだけではない。
苦しいときにどう立ち向かうのか。
仲間のために何ができるのか。
最後まで諦めない心を、どう育てるのか。
甲子園という大舞台に立つ高校球児たちは、グラウンドの上で野球をしているわけではない。
そこには、これまで支えてくれた人たちの思いも一緒に立っている。
17日、横浜高校は練習前にホームベースに向かって黙とうを捧げました。
そして村田浩明監督は、渡辺元智前監督への思いを胸に選手たちを指導していると聞きます。
選手たちにとって、こんなにも大きな存在を失った直後の試合。
本当は、気持ちを整理することさえ難しいのではないだろうかと思います。
今日の13時。
それでも、今日はプレーボールの瞬間がやってきます。
13時。
甲子園のグランドに横浜高校の選手たちが立つ。
相手は、花巻東高校。
準決勝をかけた大切な1戦です。
勝負だから、もちろん勝ちたい。
選手たちも、そのためにここまで努力してきた。
でも、今日の試合は「勝つこと」だけがすべてではないような気がしている。
渡辺元智前監督が、長い年月をかけて築き上げてきた横浜高校野球部。
そのユニフォームを着て、選手たちが甲子園で戦う。
それだけで、渡辺元智前監督への何よりの恩返しになるのではないでしょうか。
もし、空の上から見ているのなら
「横浜高校、頑張れ」そう言いながら、いつものように選手たちを見つめているのでしょう。
横浜高校らしく
今日、横浜高校が、どんな戦いを見せるのか。
勝っても、負けても。
最後まで横浜高校らしく堂々と戦ってほしい。
そして、間違いなく
渡辺元智前監督が、愛した横浜高校の選手らしく、最高のプレーを見せてくれることでしょう。
甲子園には、たくさんの物語がある。
勝者と敗者。
歓喜と涙。
そして、時代を超えて受け継がれていく想い。
今日の横浜高校の1戦には、もう1つの物語がある。
渡辺元智前監督から、今の横浜高校へ。
そして、今の選手たちから、未来の横浜高校へ。
受け継がれていくものがあります。
渡辺元智監督。
今日は、空の上から見ていてください。
横浜高校の選手たちは、あなたが愛した甲子園で戦います。
今日の甲子園には、これまでとは違う景色が見えるかもしれません。
渡辺元智前監督から受け継いだ歴史あるユニフォーム。
選手たちは、その歴史を背負いながら、自分たちの野球をするでしょう。
未来へつなぐために戦う。
1球、1打、1瞬を大切に。
最後まで全力の姿を、きっと渡辺元智前監督は願っているでしょう。
今日は、横浜高校の新しい歴史が刻まれる。
甲子園に響く応援とともに選手たちの力いっぱいのプレーを見届けたいと思います。
渡辺元智前監督のご冥福を心よりお祈りいたします。
そして、これからも空の上から横浜高校を見守ていてください。

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